32. 誕生


生まれた子供に翼がなかったことに 夫も私も嘆き、苦しんだ。
どうしてこの子だけ!
それでも救いだったのは、赤ちゃんなのに、
ほとんど泣かなくていつも笑っていることだった。
手がかからない子。
罪のない笑顔が、この子をこんな風に産んでしまった私を責めるように。
ごめんね、リーファ。
陽に透けると紅く輝く栗色の髪は紛れも泣く私の血を継いでいる。
翼がないことを除けばそっくりな我が子
成長したら、訊ねられることを覚悟しなければいけない。
苦しむのはこの子だ。
その時、ちゃんと言ってあげなければいけない。
「大丈夫、大きくなったらお前にも生えるよ」
リーファにだけ翼がないのはもしかしたら、意味があるのかもしれない。
夫と私の出した結論だった。

どうか……元気で育って。
可愛いリーファ。



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